日産自動車株式会社と日産東京販売株式会社は自動車業界では日本初となるメタバース上で車種やグレードの検討から試乗、購入契約までが完結できる新たなプラットフォーム『NISSAN HYPE LAB(ニッサンハイプラボ)』の実証実験を 3月8日(水)から 6月30日までの期間限定で実施する。
※本記事の内容、及び画像・映像等はメディア向け「メタバース空間を活用した新たな車両販売」についての説明会のご案内を通じて日産自動車株式会社よりプレスリリースとして正規に提供されたもの、並びに許諾の元に取材・撮影されたものです。
※画像・映像、その他の著作物の転載はご遠慮ください。
メタバースを活用して新た販売機会を創出
日産自動車はこれまでも車両のデザインや生産現場などでVRやMRといった技術をいち早く取り入れ活用してきた。また、広報活動の一環として、ソーシャルVRサービスの VRChat 内に東京・銀座の『NISSAN CROSSING』を再現したワールドを公開したり、新型軽EV車の『日産サクラ』の発表会を現実世界と並行して VRChat 内で行なったりとバーチャルの活用に積極的である。
その日産自動車が今回実証実験を開始した『NISSAN HYPE LAB(ニッサンハイプラボ)』とはいったいどういったものなのか。
▲ NISSAN HYPE LABについて説明する日産自動車・山口氏
日産自動車株式会社 Japan-ASEANデジタルトランスフォーメーション部の山口稔彦氏は、高精細のメタバース空間で情報収集から車種・グレードのシミュレーション、実際の購入まで完結できるプラットフォームを提供し、新たな日産の販売チャネルの拡充を目指すという。
また、メタバース活用の目的として「現実世界では時間的制約や地理的な制約から自動車の購入を検討するに際して気軽に販売店に足を運ぶことができないお客様もいる。そうした方々に気軽に購入の検討や相談ができ、実際に購入まで完結できる場を提供していきたい」と説明。
高精細な3DCGで細部まで忠実に再現
▲ 写真提供:日産自動車
今回実証実験を開始した『NISSAN HYPE LAB(ニッサンハイプラボ)』は高精細且つ軽快な動作で話題の Unreal Engine 5(UE5) を使用しており、実際の日産車を忠実に再現しているだけでなく、さまざまな角度から眺めることができる。
専用の機器や高性能PCは不要
▲ 写真提供:日産自動車
高精細な 3DCG を使っているといっても NISSAN HYPE LAB の利用に専用の機器も高性能なゲーミングPC なども必要ない。
普段お使いのWEBブラウザ、まさに今この記事を読んでいるのと同じ環境で利用することができる。
この記事の文末に記載したリンクをクリック(タップ)すればすぐにでも試すことができるのだ。(※利用には日産グループ共通ID「NISSAN ID」の登録が必要)
ブラウザを使うため、PCはもちろん、スマホやタブレットからも利用可能な点はこれまでメタバースと接点がなかった人たちにも試しやすいだろう。
自分の分身を作って自由に動き回り、他のユーザーとの交流も可能
▲ まずは自分のアバターを作成
ISSAN HYPE LAB 内ではアバターと呼ばれる自分の分身を操作して移動したり、他のユーザーとコミニュケーションをとったり、専門スタッフに相談したり、といったことが可能である。
まず、初期設定でその自分の分身であるアバターを作るのだが、体格や服装だけで無く、顔の輪郭や耳の形、目の形、鼻の形などかなり細かく設定できるので、作り込み次第で自分そっくりなアバターを作ることも、自分の理想の姿を作ることも可能なのだ。
▲ 写真提供:日産自動車
アバターが完成したら、早速ラボ内を散策。
ラボ内には実際の販売車両の展示のほか、日産のプロモーションムービーが流れるシアターや自分専用の部屋となるパーソナルルームも用意されている。
個人的にはPCでのマウス操作で視点を移動する際の挙動が左右逆なのが戸惑ったので、可能であれば設定画面でリバース設定できるとありがたい。
それ以外は概ね PCゲームの要領で自由にラボ内を散策できた。
自分専用の部屋でじっくり検討、相談も可能
▲ 写真提供:日産自動車
自分専用のパーソナルルームには自分と自分が許可したユーザーしか入室できない。
音声チャットによる会話も同室内にいるユーザー同士にしか聞こえないので、他のユーザーに気兼ねなく過ごすことができる。
▲ 写真提供:日産自動車
また、パーソナルルームには専用の商談カウンターが設けられ、専門の販売スタッフを呼んで購入の相談や質問をすることができる。
もちろん、音声チャットによる会話が可能なので、あたかも実際のショールームにいるように振る舞うことができるのだ。
商談カウンターには既存のWEBサイトなどを投影できるスクリーンも用意されており、販売スタッフが資料を提示したり、見積もり内容をその場で確認したり、ということが可能になっている。
自分でカスタマイズした車両を走らせることも可能
▲ 写真提供:日産自動車
パーソナルルームの奥には自分専用の 3Dシミュレーターが設置されており、グレードを選択したり、カタログ記載のボディーカラーを指定したり、車種によってはアルミホイールなどのオプションを装着した様子をさまざまな角度から確認しながら検討することができる。
また、作成した自分仕様のデザインは最大3台分まで保存することができので、自分の好きな時間に作成して後から家族や友人などに見せて意見をもらうなどといった使い方も想定されている。
▲ 写真提供:日産自動車
また、シミュレートした車両は 360°ドライビングビューによって走行時の様子を確認することができる。
Unreal Engine 5 を用いたリアルなグラフィックや環境光はカタログ写真やショールームの照明とは違った自然光のもとでの見た目や色合い、いわゆる『映え』を確認するのに役立つ。
▲ 写真提供:日産自動車
走行中には視点切り替えで実際に乗車した際の見え方も確認できるので、残念ながら自分で運転操作することはできないが充分に仮想空間での試乗を体験できる。
すでに公開されているソーシャルVRサービスの VRChat 内の『NISSAN SAKURA Driving Island』でも新型軽EV『日産サクラ』の試乗を疑似体験することができ、利用した VRユーザーがその体験をもとに購入を決めたことでも話題になっている。そうした意味でも『体験』を提供できるのは非常に意味があるといえる。
今後の発展に期待が高まる
今回は実証実験のため、メタバース上で購入契約まで行えるのは東京エリアに限定されているが、その他の地域でも最寄りの販売店に引き継ぐなどして購入自体は可能とのこと。
また、展示車両は『日産サクラ』『日産アリア』『エクストレイル』『フェアレディZ』の4車種に限定されていたり、車両展示以外のコンテンツもシアターで上映されるプロモーション映像ぐらいとかなり絞り込んだ状態であるので人によってはこんなものかと思ってしまうかもしれない。
しかし、あくまで今回は実証実験であり、正式なローンチに向けて実運用に際しての問題点の炙り出しやユーザーの声を吸い上げることが目的である。
正式ローンチに際してはコンテンツの拡充や機能追加、操作性の向上などが見込めるだろう。
日産自動車・山口氏も「コンテンツの拡充だけでなく、『NISSAN HYPE LAB』内での車両デザインコンテストなどのイベント開催や WEB3 の技術を使った他のプラットフォームとの連携など様々なアイディアが検討されている。今回はそうしたサービス拡大の前段階としてお客様の利便性や安定した運用方法などを確認することを優先した」と語っている。
▲ 日産自動車のこれまでのメタバース/XRにおける取り組み
正直にいうと、私は今回のご案内をいただいた時には半信半疑だった。
VRChat を使ったプロモーション活動では VRユーザーの側に立った企画で非常に高い評価を受けているが、いわばこれは日産自動車をもっと知ってもらう、日産のファンを増やすといったものであって、前出の『NISSAN SAKURA Driving Island』の特殊事例はあっても直接的な販売活動ではない。
これに対し、今回の『NISSAN HYPE LAB』はメタバース内で実際に購入契約までを行うとのことであるし、メタバースを活用といってもユーザーとの繋がりや体験を提供できるのかといった部分でも充分に機能するのか疑問だった。
しかし、説明会に参加してデモ用PCで実際に体験してみて、その考えは間違いだったと言わざるを得ない。
きちんと作り込まれたUI、細く設定変更できるアバター、音声チャットによる販売員や他のユーザーとの自然なコミニュケーション、そして何より高精細且つ軽快な動作の 3DCG はまさしくリアルに近い体験を提供してくれる。
また、NFT や DeFi といったブロックチェーンの活用なども想定していて、メタバースプラットフォームとしての今後の発展にも期待ができる。
これまでも VRやMR、メタバースといった新しい分野に積極的に取り組んできた日産自動車が、日本初のメタバース上の販売チャネルを開くことで名実共に自動車業界のメタバース活用におけるリーディングカンパニーになっていくだろう。
日産自動車の試みが起爆剤となってメタバース界隈が盛り上がることを願いつつ、今後の発展に大いに期待したい。
『NISSAN HYPE LAB』利用時の推奨環境
- 推奨ブラウザバージョン
- Chrome: 最新版
- Safari:最新版
- Microsoft Edge:最新版
- スマートフォンの最新OSバージョン
- iOS: iOS 10 以降
- Android: 11 以降
- PC操作の場合の推奨環境、仕様
- Macの場合:最新OS
- Windowsの場合:Windows 10以降
- RAMの容量:4GB以上
- PCストレージ:1GB以上
- スクリーンレゾリューション:720p以上
- Intel hd: 3000以上